『Voices from the Shadows

 

        ~闇からの声なき声~』


 

映画製作者 ナタリー・ボルトンさんからのメッセージ

 

イギリスでは多くの関係者が、日本の患者や介助者がME/CFSという病気の啓発をしてくださっていることにとても感謝しています。また、ME患者の脳に炎症が見られたという日本の最近の研究成果をたいへん嬉しく思っています。本日は、皆さんの努力が実ることを願うと共に、この映画について少しお話ししたいと思います。

 

この映画が完成したのは約3年前でしたが、製作を始めたのは更に数年遡り、映画中のインタビューは今となってはかなり古いものです。にもかかわらず、当時の状況が現在とさほど変わらないことは本当に残念なことです。イギリスでも、他の国でも、似たような状況が今も続いているのです。

 

映画を撮り始めた時、最初にサイモン・ローレンス氏にインタビューしました。彼は、重症ME患者のための“25%グループ”という団体を創立し運営している人です。彼を撮影するのは非常に困難でした。彼の病状は私たちの想像を遥かに超えるものだったからです。

 

過去6年ほどの間に、私は、若い世代の患者グループとの交流を重ねてきました。彼らは、私の娘の友人たちでした。親しい交流のあった青年は、起き上がって小旅行にいけるほどの状態から、完全な寝たきりになり、電動車椅子でもトイレにも行けず、コンピューター画面やテレビも見ることができず、読書もヘアカットも、髭剃りもできなくなりました。彼の写真は、映画にも出てきます。

 

この映画は、ショッキングな内容で、多くの人にインパクトを与えます。それは、この映画が特によくできた映画だからということではなく、登場した人々の誠実さと正直さゆえです。私たちは彼らを証人として撮影しました。論議をかもし出すためではなく、彼らが語らねばならないことを聞いた結果、この悲劇のストーリーが誕生したのです。

 

 

日本語字幕翻訳者 マーク雅子さんからのメッセージ

 

今日もまた、世界のどこかで、そして、日本のどこかで誰かの助けを待っている慢性疲労症候群患者がどれほどいるでしょうか。

私は、オーストラリアに住んでいましたが、10年以上前に日本に一時帰国した際、インフルエンザのようなものに感染し、その後CFSを発病しました。オーストラリアに帰ってからありとあらゆる医師の診察を受けましたがすぐには診断がつかず、そのまま仕事を続けているうちに重症化し、自宅療養、車椅子になりました。

 

5月12日慢性疲労症候群世界啓発デーのことを知ったのは、2011年の頃ですが、世界の患者会や個人啓発家たちがさまざまな形で啓発運動をし、この日を中心に患者たちの輪が広がっていることに励まされました。一人で家からも出られず痛みと疲労に苦しんでいる時、Facebookで流れている画像や動画を見て、世界のどこかで誰かが叫びをあげている!自分は一人じゃないんだ!と慰められたことを覚えています。

 

日本でも、石川真紀さんをはじめとする啓発家たちが身を削って奮闘しているのを知っていました。日本じゅうの年金事務所が慢性疲労症候群を認知したのも、メディアなどで多く取り上げられ少しずつ病名が知られるようになったのも、日本の啓発家の方たちと心ある支援者たちの努力の賜物だと思い、感謝しても感謝しきれません。いち患者として、心より感謝を申し上げます。

 

さて、「闇からの声なき声」は、イギリス医療・福祉の現場で起きている小児CFS患者の悲劇を描いた作品ですが、日本のCFS患者の声なき声を代弁してくれる作品だと思い、日本語字幕版を体調の波にもまれながら翻訳しました。石川さんにも、精神的なサポートをしていただきました。製作者のナタリーさんは、ご自身の娘さんがこの病気にかかり、現在も介護の合間を縫ってこのプロジェクトに携わっておられます。2012年2月にDVDがリリースされて以来、日本で積極的に上映会をしていることが世界の患者会にも影響を与えているとおっしゃっていました。また、日本で初のブルーライトアップもまた、世界にいる多くの患者さんたちを慰め、励ましています。青森の方々、本当にありがとうございます!会えないけれど、ゆるキャラ君たちも暑いのにご苦労様です!

 

5月12日は、患者にとって、啓発が進むという意味で喜びの時でもありますが、啓発活動の後に襲ってくる何週間、何ヶ月症状が悪化し回復しない状況に追い込まれていく厳しい時でもあります。患者がこのような状況に追い込まれることなく、国が慢性疲労症候群患者への福祉サービスを一日も早く整え、病気の啓発に乗り出してくださる日を心より願っています。そして、がんばっている患者啓発家の方たちがゆっくり休んで治療と療養に専念できる日が来ることを日々お祈りしています。

 

まーくハウス&ぷろじぇくと

マーク雅子

 

イギリスのCFS/ME ドキュメンタリー映画『Voices from the Shadows ~闇からの声なき声~』の上映会には、80名を超えるご参加をいただきました。地域の保健師、民生委員、町会長、行政職員の皆様、青森県外に住む当事者たちも大変な思いをして駆けつけてくれました。